いま、ドル円レートが円安に進んでいることは誰でも知っていることでしょう。
円安が進んで苦しい、という企業もたくさんあります。
円安だと、輸入品は円ベースで高くなる。そのかわり、海外での売り上げは上がる.
でも、円高が進むことで苦しくなる企業もありますよね。
円高だと、輸出品は円ベースで売り上げが減る。その代わり、輸入品は下がる。
では、円安と円高のどちらが良いのでしょう?
この議論は、いろいろな観点があり、
長期か短期か、ストック重視かフロー重視かで見方考え方は変わるので、
一概に答えは出せないのですが、
短期的にみると、観点のひとつは、輸出入でしょう。
2022年度の輸入額は120兆9549億円、輸出額は99兆2264億円でした。
貿易収支=輸出-輸入ですので、-21兆7284億円、つまり貿易赤字です。
これほどの貿易赤字は過去最大です。
今年1月に明らかになった巨額の貿易赤字は、おおきくニュースでとりあげられたので、覚えている方も多いかと思います。
みてみましょう。
なお、このグラフは、日本独自の年度(4-3月)ではなく、暦年(1-12月)にしています。
これをみると、2011年から赤字が定着してきた感じがあります。
2011年と言えば、東日本大震災があった年ですね。
この年を境に、日本はしばらく原発が稼働しなくなり、火力に頼ったため、原油の輸入が急増しました。
ふつう、貿易赤字は、国内需要が旺盛なので、経済には悪い事とはいえないのですが、
日本の貿易赤字に関しては、国内のエネルギーは8割を石油ガス石炭に頼っているから、なんですね。
(この比率は先進国最悪です).
そして、昨年2022年はこの状況に加え、
ロシア―ウクライナ戦争でエネルギー価格が高騰、
さらに円安が追い打ちをかけたため赤字が膨れ上がった格好です。
幸い、2023年は自動車の輸出が絶好調で、輸出金額円安の影響もあって円ベースでは増えています。
速報値ですが、この9月の貿易は、
輸出 9兆1981億円
輸入 9兆1357億円
で、輸出-輸入=624億円のプラスとなりました。
自動車の輸出額は過去最高でした。
円安の場合、輸出額は円ベースで膨れ上がるので、そのメリットも大きいのですね。
でも2023年全体としては、貿易収支は依然、赤字です。
(2023上半期(4-9月)の貿易統計,財務省発表値)
貿易収支が赤字である限り、どこかで埋め合わせをしないと経常収支が赤字になります。
だから直ちになにかまずくなる、ということもありませんけど、
稼ぐ力が低いのに借金をしているという形ですから、
仮に経常収支赤字が長く続くと、
債務返済によって生活水準が低下します。
幸い、2022年は所得収支の黒字があるので経常収支はプラスでした。
2023年は、原油価格も安定してきたため、
貿易赤字は(赤字のままですが)、
2022年より7-8割程度赤字が縮小し収支は改善するはずです。
よかったですね。