1950年代から現代にいたる、過去のバブル相場の動きを、当時の状況と合わせてご紹介しているのですが、いわゆる、1989年のバブルの後にも、何度かバブルが起きています。
今回は、いわゆるITバブル、に触れます。
1999年1月から、2000年3月くらいにかけての相場です。
今から見ると20数年前の出来事ですが、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
1999年に入ってから2000年3末までの、当時の上昇相場をみておきましょう。
1年3カ月の間に、1万3415円から、20337円まで上昇しました。
これは、率にすると51.6%に相当します。
上昇率は、期間の短さを考えるとすさまじいものでした。
この時の相場は、かなり特徴的でもありました。
1989年は相場全体で、つまり、まんべんなく上昇しました。
しかし、1999年は、ITセクターだけが特に高く上昇し、それ以外のセクターは、イマイチだったのです。
インターネットという「何か知らんが凄いものが出た」に絡めばなんでも上昇していた半面、そうではないセクター。例えば、建設、倉庫、空運、金属などのセクターは、むしろ大きく下降していたのです。
勝ち組のもつ要素(あるいは因子。ファクターと呼ぶ。)と株価を分析することで、株価上昇のファクターを明確にし、そのファクターをもつ銘柄に投資するのが、金融工学の一つの成果なのですが、それをファクターリターンなどとも呼んでいます。
例えば、大型株、値嵩株、バリュー株、グロース株、あるいは、業種(セクター)などは簡易的なファクターになります。
1989年のバブル相場の時は、鉱業、機械、金属、海運などという業種がファクターでした。この時は不動産バブルと株式バブルが併走していたので、工場や土地などを所有しているからという単純な理由で上昇した、という分析になるでしょう。この時は、情報通信業はむしろ大きく下げたセクターでした。
一方、1999年のITバブルでは、先物取引業、情報通信業が上昇セクターの代表格で、1989年の時にはバブルを引っ張った工業、金属などはむしろ株価が大きく下落して足を引っ張っているセクターだったのです。
株価指数が上がったからと言って、すべての個別株が上がるわけではないということを、こうして(ファクターという切り口や見方で)説明ができるわけです。