いま、欧米は金利をどんどん上げている最中であることは、多くの人が承知していることだろうと思います。
なぜ、こぞって金利を上げるのか?
一言で書くと、
「お金の流れを止めて、モノを売れなくしたい」
からです。
そのためには、お金を借りづらくして、お金がじゃぶじゃぶ流通しないようにするとよいのです。
お金を借りづらくする=返済が大変になるように故意に金利を上げて操作する
ことになります。
副次効果もあります。
金利を上げると、預金金利が上がりますので、人々はこぞってお金を銀行預金に回しますよね。
そうすると、(企業であれ個人であれ)民間のお金は銀行に向かいます。
消費せずに貯金したいわけですから、余計にモノが売れなくなるというわけです。
お金は借りづらいわ、モノは売れないわ、ですから、今の経済は犠牲になります。
マクロ経済の教科書的には、物価上昇が激しすぎると、
長い目で見ると生活が立ち行かなくなるので、
今の経済を犠牲にしてでも、激しい物価上昇を抑える必要がある、
とされています。
では、欧米の物価上昇は、どう推移してきたのでしょう。
みてみましょう。
CPIは、物価指数です。CPI上昇率が物価上昇率ですね。この上昇率をインフレ率とも呼びます。
このグラフでは前年同期比でみています。
2021年から、インフレ率が目立って上昇していますが、ここに至る流れは、このようなものでした。
2020年にパンデミックがおき、人々は行動が制限された。
モノはうれず、経済も回らずに景気は悪化、物価も下がった。
しかし、2021年には経済が回り始め、人々も徐々に生活を元に戻しはじめた。
特に2021年の後半になると、ワクチン接種も劇的に普及し、経済は一気に再開した。
しかし、一気に再開したことで歪が出始めた。
そのころは、十分な量の労働力は職場に戻っていなかった。
そもそも、家にいることにすっかり慣れてしまい、人々は働かないことに慣れていた。
人をかきあつめるために、人件費が上昇をはじめた。
食料やエネルギーも需要が急上昇したおかげで、国際価格も上昇を始めた。
こうして、2021年から世界的な規模で物価が上昇しはじめた。
こんな感じですが、これに拍車をかけたのが、2022年2月に始まった、ロシアのウクライナ侵攻です。
ロシアは世界3位の原油生産をする産油国、ウクライナは世界8位の小麦生産国ですから、
戦争によって生産は犠牲になります。
こうしてエネルギーも食料も、上昇を加速させたわけです。
この驚異的な物価上昇をなんとかするために、欧米は急激に金利を上げはじめます。
そのおかげで、物価上昇はだんだん鈍くなり、しまいには、上昇率は下がってきました。
そこで、欧米の中央銀行は金利上昇を抑え始めています。
いまは、インフレ率上昇は収まってきつつありますので、もうこれ以上は上げなくて済むところまできています。
しかし、米国の上昇率を見ると、ここ何か月か物価が再び上昇(緑〇)を始めています。
米国は、上昇に転じた物価をおさえるために、
もっと金利を上げて経済をさらに止めるのではないか、
という不安が株式市場の心理的重石になって、
相場が大きく下落した、ということになります。
この1カ月は、イスラエルとハマスの衝突もあって、またまた相場は下げた。
10月末あたりが最も暗かった。
いまの株式相場をCPI中心に語るとこのような感じになるでしょう。