日本の賃金について、厚生労働省が、毎月調査している実質賃金指数というものがあります。
実質賃金というのは、名目賃金という、賃金の絶対額(円)に対して、物価上昇分を考慮してその部分を割り引く計算を行います。2020年1年間における、月平均を100として、毎月どれくらい上昇(あるいは下落)したかを、前年同月比で示します。
前月比ではなく、前年同月比にするのはなぜかというと、四季とか、それぞれの月では、特殊な事情で前月比大きく変化することが多いので、同じ月同士で前年と比べる考え方です。
たとえば、11月と12月をくらべると、年末商戦がある12月は特殊要因がいっぱいあって11月とは単純に比べられません。
いまご紹介している、実質賃金指数というのは、国家経済の一部でマクロ経済の一つの統計になりますが、マクロ経済ではよく使われる考え方です。
英語では、YoY(Year on Year)などと略されます。これに対して、前月比(MoM ,Month on Month)なども時々使われます。
CPIなども、通常はYoYで示されますが、時にはMoMでも示されることがあり、きちんとしたニュースや記事では、かならず何の数字であるか示されます。
時々、ニュースでCPIをMoMで示し、何も付記されていないデータをしれっと伝えることがあって、
びっくりしますけど、
これは意図した騙しかもしれません。
話がそれちゃいましたね。
もとにもどして、実質賃金指数の推移をみてみましょう。
これをみると、ずっとマイナスが続いていますね。
2023年8月の実質賃金が最新の値(速報値)ですが、-2.5%(YoY)です。
ここでは、14カ月分しか発表されていませんが、過去のデータを並べると、じつに17カ月連続で低下しています。
年平均でみて、もう少し長期でみても、この情けない数字は変わりません。
2013年からみると、前年比マイナスが目立ちます。
(2023年は、1-8月の平均をとっています)
この中で、プラス成長をしたのは、2021年が最近ですが、この前年である2020年は、パンデミックのおかげで、
経済がボロボロ(賃金も-1.2%)だったので、その翌年である2021年は多少プラスになってあたりまえであって、
そのプラスが足りない点で情けなさがあります。
プラス成長はこの10年間、わずか3回で、その3回の成長率も、平均0.5%です。
マイナス成長は、この10年間,実に7回あって、その7回の成長率は、平均-0.9%です。
これは、プラス成長は、回数が少ない(たった3割)うえ、成長率も少ない。
マイナス成長は数が多い(なんと7割)うえ、マイナス成長率も大きい(プラスの時の倍くらい下がっている)。
トレードに例えると、こんな感じです。
勝率は3割、一回の儲けは少ない
敗北率は7割、1回のロスはでかい
ということに相当するでしょう。
こんなことを続けていては、元本はどんどん目減りしますね。
いまの日本の賃金は、そんな感じになっているわけです。
2023年は、春に大きく賃上げされていますが、統計上、これは名目賃金が上がっているだけで、
物価が上昇している分、実質賃金は下がっていることになります。
賃金あがっているように思いがちですが、数字を読むとそれは思い込みであることがわかりますね。