今週は、8月14(mon)から日経平均が大きな下落でスタートしました。
しかし、その時のニュースは、違和感のある説明でしたので、これを掘り下げます。
「a 8月発表の7月の米CPIが、7月発表より大きくなり、それで米国の利上げリスクが高まった。
b だから米ドルが強くなり、円安になった。
cそれを嫌気して日経平均が下がった」
と説明されていました(NHK)。
このニュースの内容をa b c 3つに分解して検証してみます。
まず、7月のCPIは、市場予想より低い値でしたから、米国の物価は、思っていたより安定に向かっていることになります。
実際、債券市場では、利上げ懸念は高まっていません。つまり、FOMCによる利上げ見込みは上がっていないのです。
単純化すると、米金利は上がらないという市場予想なのです。
実際、ドルは、他の通貨に比べて、強い動きではありませんでした。
aの部分は、ここまでの米国市場の反応を見る限り、NHKのニュースは間違っています。
aの部分の市場の説明としては、正しくはこうです。
A 米CPIは予想よりも低い上昇で済んだので、米国の利上げリスクは上がらなかった。
しかし、市場では、ドルは強くなったわけでもないが、ドル円は上がりましたね(円安)。
したがって、bの部分も間違っています。
なので、bの部分の市場の説明としては、正しくはこうです。
B 一方、ドルは他通貨に対して底堅い動きであった.
もう少し加えるなら、
B’ ドル円市場では、ドルの底堅さが過大に反応して円安に進んだ。
でしょうか。
cの部分、円安を嫌気して日経平均が下がったという説明も間違っています。
円安になると、ドル建てで輸出する企業が儲かるので、日経平均はいままで上がってきたはずです。
そもそも、8月14日は、円安にはなっていません。午前の9時台のある瞬間、
確かに円安に動きましたが、10時以降は一気に円高に進み、一日全体としては円高になっていました。
したがって、cの部分の市場の説明としては、正しくはこうです。
C 市場はやや円高に進んだものの、日経平均は下落した。
では、下落した原因は、どこにあるでしょうか?
たぶん、為替ではなく、別のものです。
たとえば、
今週発表される中国の経済指標がネガティブな材料をもたらすことへの反応
米長期金利の上昇による米ハイテク株の弱含みの反応を嫌気
長引く円安でエネルギー価格が上昇、輸入物価も上昇するので、それを嫌気
要するに、本日の何らかのニュースで下げたものではない、ということがわかるのです。
先週の米CPIの発表とは、無関係に8月14日の日経平均は下げた、と判断するのが妥当でしょう。
あまりTVニュースを信用してはいけないのです。
奥村 尚