From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
先週、
ジャクソンホール会議がありましたね。
会議と言っても、
FRBの12ある連銀の中のひとつ、
カンザスシティ連銀主催の、
金融政策シンポジウムですが、
中央銀行首脳の集まりで、
マニアックな集いです。
金融専門ニュースならいざしらず、
日本の地上波のニュース番組でも、
普通に報じていたのにはびっくりしました。
同じくらいびっくりしたのは、
パウエル議長の発言で
株式市場が大きく下落したことです。
NYdowで5-6百ドル程度かなぁ、
と思っていたんですが、
1000ドルを超す下げとなりました。
原因は、パウエル議長の口から、
「(インフレの抑制というFRBのミッションを)
やり遂げるまで(利上げを)
やり続けなければならない。
利上げは、家計や企業に痛みをもたらす。」
という発言があったからです。
かみ砕くと、
米国で物価がこれほど上昇するのは、
半世紀ぶりだ。
このひどい物価高を抑えるために、
誘導金利を上げている。
市中金利もリンクして上がるので、
借金の返済は増えてくるし、
新規借り入れもしづらくなる。
ということになります。
家計であれば、
大きな買い物はしづらくなるし、
既にある借金は金利負担が厳しくなる。
企業であれば、
借入しての新規投資はしづらくなる。
よって、お金は流れなくなり、
経済に痛みをもたらす。
さて、ここからが問題です。
過去、FRBが金利をどこまで上げると、
物価が下がったのでしょうか?
そもそも、金利を上げると、
物価は本当に下がるのでしょうか?
1982年以降の物価と
金利の関係を見てみましょう。
物価は、CPI伸び率(前年同月比)、
金利は、FFレートの実効レートを、
40年分プロットしました。
1980年代は、高金利の時代だったので、
金利(FFレート)は物価を上回る大きな値でした。
政策金利は、
巨大銀行間取引に使う
最も有利な金利なので、
普通の企業や家計が借りる長期金利は、
もっとずっと大きな金利です。
その大きな金利は、
米国債を買ったり、銀行預金をすることで、
誰でも得ることができます。
言い換えると、物価上昇より
金利上昇が大きかったので、
物価が多少上がっても
お金を銀行に預けておけば、
物価を上回るリターンが得られた時代です。
物価高で通貨が目減りすることは
なかったのです。
さて、先ほどのグラフから
このような事が見てわかります。
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1 金利(FFレート)を頑張って上げても、
物価(CPIの伸び)は簡単には下がらない。
2 金利が物価上昇を上回るほど上がって、
ようやく物価が下がり始める。
3 物価が下がり始めるころには、
金利はすっかり下がっている。
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今CPI上昇率は 8.5%です。
多分、FF金利を8.5%まで引き上げないと、
物価は下がらない。
FF金利は今2.5%で、
更に6.0%も上げないといけないとすると、
FRBは、政策決定会議で
1回あたり通常0.25%上げるので、
1%上げるために4回、
6%上げるためには 4×6=24回、
上げないといけない。
その政策会議(FOMC)は
年8回しかありませんので、
3年かかります。
うーん、そんなに待てません。
どうするか….
供給を増やすしかありません。
食料やエネルギーの供給を増やす。
もう、中央銀行が
どうこうできる問題ではないんです。
政治で解決しないといけない。
これが今、試されていることでしょう。
奥村尚