From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
今回は、
商品に関する話題を取り上げます。
商品という日本語だと
あらゆるものが該当しますので、
コモディティという言葉を使いましょう。
株や国債のように、
コモディティ取引市場があって、
そこで取引されるものです。
原油(石油)やガソリンなどのエネルギー、
金(Gold)や銅のような金属、
トウモロコシや大豆などの穀物が該当します。
こうしたコモディティの中に、
小麦があるのはご存じの方も多いと思います。
特に日本は、
原油はもちろん、
小麦もほぼ輸入に頼っていますね。
小麦は87%を輸入に頼っています。
原油(99.7%)よりはマシですが、
大半を海外に頼っているということですね。
コモディティの相場、
とりわけ原油と小麦の価格上昇に関して、
ウクライナ、ロシアの
戦争の影響が大きく出ている
という話を
よくTVで見ることが多くなってきました。
生活者にも密接な
小麦相場の推移を確認しておきましょう。
コロナ禍の人手不足から
2020年秋からジワジワ上がって来た小麦ですが、
戦争勃発で一気に上昇しました。
3月8日に過去最高を付けましたが、
その翌日9日、米農務省が
在庫の見通しを従来予想を上回ると発表し、
一気に下落して今に至っています。
国連食糧農業機関(FAO)では
戦争の影響で、
世界の食料価格が8-22%上昇すると、
発表しています。
(2022 Mar-May Response Plan,FAO)
今の水準が、高値圏というところでしょう。
さて、クイズです。
「日本は、誰がどこから小麦を買っているのでしょうか? 」
・・・
答えはこうです。
日本で輸入する小麦は、
全て日本政府が買っています。
買い付け先は、
米国、カナダ、豪州の3国だけです。
びっくりですね。
国家が輸入を行っているのです。
買い付け先も、3カ国で、
他からはほぼ買っていません。
2019年の輸入先では、
・米国:48%
・カナダ:32%
・豪州:16%
3各国合計97%です。
政府の売渡し価格は1トンあたり
72530円(3月9日農水省HP)です。
2021年10月にも、
19%の値上げがあったばかりですが、
その時の価格よりも
さらに17.3%の値上げとなりました。
今年10月まで同じ価格が続くので、
小麦粉製品は4月以降さらに値上げが予想されます。
国内でも小麦は作っていますが、
同じ量を作るのに9000円かかります。
土地が狭く効率が悪い上に
人件費とエネルギーコストも高いのですね。
政府が輸入した小麦ですが、
まずは製粉会社が買い小麦粉に加工します。
パンメーカーは、
製粉会社から小麦粉を購入する、
という流れです。
国が輸入をしているので
製粉会社には関税はかからないのですが、
関税の代わりに手数料を上乗せして国に払います。
この手数料を
マークアップといいますが、
このマークアップは
日本の小麦生産者の給付金原資になるので
農業保護にもなります。
製粉会社は、
やろうと思えば政府を通さずに小麦を輸入できますが、
高額の関税が加算されます。
その関税は60kgあたり、3300円です。
マークアップであれば、
関税の1/3以下で済むので
輸入社には有利というわけです。
小麦の買い付けは、
政府が行うと書きましたが、
実務的には大手商社を通して買い付けます。
日本で消費する小麦などを扱う大手商社は、
世界の穀物市場でも大きな存在なのですね。
中でも最も関係するのは丸紅でしょう。
丸紅は、2013年に
穀物メジャーガビロンを
買収し傘下に収めました。
27億ドル(3000億円)
という巨額で買ったものの、
うまくいかず、
そのうちにコロナ禍で赤字が拡大しました。
その時は丸紅全体で2000億円の赤字のうち、
ガビロンだけで800億円弱の損失を計上しました。
重荷だったんですね。
それが、
今年2月食料高騰による市況改善の中で、
カナダのバイテラに売却を発表しています。
重荷を処分してからは、
調子のよい大手商社の中でも
株価は目立ってふわふわと浮いてきました。
丸紅は3カ月で32%のリターン、素敵ですね。
奥村尚