From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
「原因と結果の逆転と予言者の出現に気をつけよう」
日経平均は、先週から今週にかけて、
大きく上下しましたね。
一般ニュース番組では
オミクロン株であるとか、
中国の利下げであるとか、
下げたから後付けで理由をくっつけて
解説するニュースが多かったように思います。
もう少しマニアックな市場の解説の番組では、
市場のリスクが高まったから下落している、
という説明もされていました。
リスクが高まったということは、
つまりはボラテリティが上昇したということになります。
実は金融の実務上、
リスクとボラテリティは全く同じ意味ですが、
どうも若干の区別がされている気がします。
リアルタイム性が高いのが「ボラテリティ」で、
リアルタイム性が低いのが「リスク」、
というニュアンスで使われているフシがあります。
大きな下落が瞬時に起こったここ1週間の相場では、
ボラテリティが急上昇したから相場が大きく下落した、
という説明がしっくりくるのです。
ですが、
本当にそうであったかというとNoです。
世界中の投資家が見ていると思われるシカゴの恐怖指数は、
それほど大きく上昇はしませんでした。
そんなに投資家は恐怖を(リアルタイムでは)感じていなかったということです。
ですので、VIXを観察している投資家は、
それほど大げさに捉えないで
太っ腹で構えていられたと思います。
では、リスクはどうであったでしょうか。
簡単に計算できるので、チャートで見てみましょう。
黒で示すのがリスクです。
計算上、一定の期間を定義する必要があるので、
20日として計算し、その推移をプロットしました。
リスクが上昇すると日経平均も下がるのがよくわかると思います。
ここ1-2週間でいっても、
株価の下落が結果として市場リスクを増大させ、
それにびっくりしてさらに下落が増長された感じがあります。
つまり、ボラテリティが高くなって
株式が下落したのではなく、
株式が下落したからリスクが大きくなって、
それを見てまた株式が下がった、という循環が起きたのですね。
株式市場というのは、
市場参加者の需要と供給のみで値が付きます。
しかし、オーダーを出すのは人間ですから感情があります。
なんとなく、下げるかな、
という気持ちを持つ参加者が多くなると、
その日の市場の雰囲気が
下げたいという気持ちになって伝わり、
本当にそのようになる。
でも、そこには下がる理由などないのです。
ただし、
その下げたいという雰囲気を発火させる
きっかけとなる理由は必ずあります。
それが中国の利下げであったりするのですね。
そう考えると、きっかけとなる理由そのものは
重大でも重要でもありません。
仮に今回中国の利下げがなくったって、
市場は別の理由を探して、それをきっかけに下げたと思います。
こうした「いつ」下げたか、「どれくらい」下げたかを
言い当てることはできません。
当てたとしても、毎回毎回いろいろ予言を言った中の
1回がたまたま当たっただけであり、
毎回予言が当たるという人はいないはずです。
(もしいたとしたら、世界中の富を手中にできるでしょう)
相場は、実はシンプルなんです。
奥村尚