奥村式資産運用術

ロイターから学ぶ投資家に必要なリテラシーとは?

From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

今回は、ニュースの受け止め方に関する話をします。

インドネシアルピー(IDR)
マレーシアリンギ(MYR)
韓国ウォン
など

アジア通貨はドルに対して下落が止まらない
というニュースがロイターから
報道されています(7月19日)。

このニュースでは、

ドルは堅調
アジア通貨は下落が続いている
その原因は最近のコロナの拡大にある

という趣旨でした。

そのアジア通貨の代表として、
ルピー、リンギ、ウォンを取り上げています。

私は、あれ、と思いました。

確かに、アジア諸国も日本も、
コロナ感染者が拡大していますが、

これは世界共通の問題であり、

米国だって同様です。

その証拠に、
インドネシア、マレーシア、韓国の
感染者状況を米国と比べると、

数字として明確にわかります。

各国の感染者状況をグラフにしたものです。

データはジョンズホプキンス大が公開する
ダッシュボードからとっています。

(余談ですが、

韓国の英語名はSouth Koreaなので、
正確に英訳するならば南朝鮮
と訳するのが正しいのですが、

過去の歴史的経緯もあってか
日本では韓国と訳しています。)

■2021のコロナ感染者数(日次推移)
米国

マレーシア

インドネシア

韓国

米国が一番コロナで苦しんでいるのは、
このグラフを見ると明らかです。

なにしろ、
米国の新規感染者数は
最近うなぎ上りで、

一日60万人に達しているのです。

インドネシアは一日6万人、
マレーシアは一日1.4万人です。

人口を考えても米国の方がはるかに深刻です。

(インドネシアは米国より2割少ない2.7億人
マレーシアは3200万人、韓国は5200万人)

医療体制の事情は異なるにせよ、
コロナ拡大が理由でアジア通貨が下落
していると断じるのは、

無理があることはわかるでしょう。

それだけではありません。

アジア通貨の下落が止まらない、
というのもウソなんです。

今年になってからのアジア通貨の
レートの推移をみてください。

参考のため、ドル円レートも入れています。

DXYは、ドルインデックスのことで、
ドルの強さを指数化したものです。

ユーロ(57.6%)
円(13.6%)
ポンド(11.9%)
など

6か国の対ドル通貨レートを合成して計算します。

ドルインデックスが上がると、
ドルが強い事になります。

他国の通貨レートは、ドルレートで、
上にあげるほどその国の通貨は安く、
ドルは強いことになります。

■2021年アジア各国の対ドルレートとドルインデックス推移

これをみると、

まずドルインデックスと
同じ程度に上昇している
インドネシアルピー(IDR)は、

完全にドルレートにリンクしており、

ドルが強くなった分
ルピーが下がっているだけ、

という事がわかります。

ルピー以外の通貨は、
ドルインデックスより若干安くなっていて、
確かに通貨安(ドル高)ではありますが、
最も値を下げたのは日本円です。

日本円が最も値を下げたものの、
年初に比べて6%程度の変動(円安)であり、

アジア通貨の下落は、
日本円ほどは下落していませんから、

下落が止まらない、
というほどの下落ではないのです。

(だって、最も価値を下げた日本円ですら、
ドルに対して下落が止まらない、という
ニュースにはなっていないのです)

なお、円は、参考までに入れましたが
ドル、ユーロに次ぐ主要国通貨として
位置付けられており、

アジア通貨の分類には入りません。

こうして、自分でデータを取りながら
検証するのは誰でもできることですので、

ロイターのニュースだから、
と鵜吞みにせず、

確認してみることも重要ですね。

なお、このニュースの書き手は、
ロイタースタッフ、と書いていました。

おそらく、ペーペーの新人が書いた記事だと思います。

奥村尚