From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
最近、セミナーを開催すると
仮想通貨に関しての意見をよく聞かれます。
投資適格性に関するものです。
今は『暗号通貨』と言われていますが、
資産の裏付けがないのが最大の欠点とされます。
金などの商品、株、債券、いずれも
それぞれには資産に基づく価値があります。
金は、ゴールドという商品としての価値があります。
株式は、発行会社の価値が基礎になります。
債券は発行体の保証があるので、
その信頼性に基づいて価値が定まります。
世界で最も信頼性の高い債券は、
国債ではカナダ、オーストラリア、
デンマーク、ドイツなどです。
通貨では、基軸通貨である米ドル、
ユーロになるでしょう。
発行体である中央銀行、最終的には
国家の信頼に基づく価値があります。
しかし、暗号通貨は、
誰が発行しているか不明で、
管理者も不明、
その割には取引所で勝手に思惑で価格がついています。
しかし、今月、一大事件がありました。
2021年6月5日、
エルサルバドルのブケレ大統領が、
ビットコイン(以下BTC)を法定通貨
とすることを表明したのです。
この国では、USドルを法定通貨
として使っていましたが、
BTCも法定通貨として認める
ということです。
この国のGDPは、24,609(百万ドル)です。
日本の 1/200 で規模は小さいのですが、
一国の法定通貨ですから、
これはニュースとなりました。
法定通貨という事は、
エルサルバドルで暮らす人にとっては
米ドルと同じくBTCが流通し、
暮らしに使える通貨になったということです。
エルサルバドルで生活の支払いや、
資産をBTCで購入できるわけですから、
資産の裏付けができたことになりますね。
BTCの投資価値は高まったものと解釈できます。
ただし、
BTCの市場価値に経済をゆだねる
ということは、
BTCが大暴落した場合
国で流通する貨幣ですから、
経済は破壊的な損害を受けます。
ハイパーインフレになりやすいのです。
それ以上にメリットがある
ということでしょう。
中米らしい思い切った話です。
暴落のリスクを負担する代わり、
BTCとして保有していると
価値がどんどん上がる可能性をもつので、
投資資産としての意味合いもち、
面白い貨幣ともいえます。
ここで、BTCのリスクとリターンを、
そのほかの代表的な資産を比べてみます。
数字で確認しておきましょう。
代表的な資産のリスクとリターンの分布です。
(2012.2月-2021.3月、日次ベース、ドルベース)
横軸はリスクで、小さいほど有利です。
縦軸はリターンで、大きいほど有利です。
最も不利な資産は、WTI(原油)です。
リターンが唯一マイナスでした。
商品の性格上、
長期保有してはいけない性質があるので、
これは仕方ないでしょう。
日本国債(JGB)は、
リスクもリターンもほぼゼロでした。
ゼロ金利なので、これも仕方ないでしょう。
ドル円の通貨は、株式にくらべると
低リスク低リターンです。
株式は、日経平均とNYダウは似た位置にいます。
意外なのがGoldで、
株と同じ程度のリスクですが、
リターンは大きいですね。
ただ、BTCは、リスクは株より低く、
しかも株よりさらに一桁リターンが大きいので
圧倒的に有利な資産です。
これを見る限り、
暗号通貨は投資する価値がある、
といえます。
ただし、リスクはあります。
流動性リスク、換金性リスク、課税リスクです。
取引量が少ない暗号通貨では、
流動性リスクがあります。
取引が少ないので、
取引をしたいときにできないリスクです。
負け組コインになった場合は、
こうした懸念が現実化します。
取引ができたとしても、
換金までにひと手間、あるいは
二手間かかることが多く、
そもそも、簡単に換金できない仕組みを
もつ暗号通貨もあるので、それもリスクです。
価格が激しく動く中で、
値上がり益にいちいち課税されるのもリスクです。
加えて、暗号通貨に暗雲、
さらに強大な敵も見えてきました。
世界の中央銀行です。
中央銀行のデジタル通貨
(Central Bank Digital Currency,CBDC)です。
スェーデン中央銀行(スウェーデン国立銀行)
のイングベス(Stefan Ingves)総裁は、
「暗号通貨はマネーロンダリング(資金洗浄)などの問題が浮上していて、そこに規制が生まれると信じるに足る理由がある」
と発言しています(ブルームバーグ)。
2021年から、ECBは
デジタルユーロの発行を行う予定、
日本もデジタル円の実験を行います。
日銀のHPをみると、デジタル通貨に関する
トピックにあふれています。
そうした資料を見る限り、CBDCは
世界の中央銀行が暗号通貨をつぶしに
かかっている要素をもっています。
こうしたリスクを承知したうえで、それでも
期待リターンが大きいことに目を向け、
投資するか否かを考えるのが良いでしょう。
奥村尚