From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
2月15日(月)、
内閣府はGDP速報値を発表。
市場(株式に限らず)も大きく反応しました。
このGDP速報値は、直前の3カ月と比べて
どのくらい伸びたかを出しています。
10-12月(3Q)のGDP速報値は+3.0%でした。
それを年率換算した値は+12.7%と発表されました。
こうした数値だけが独り歩きしていますが、
正しく解釈しておきたいので、
少しばかり掘り下げてみましょう。
ここでいうGDPは、実質GDPで、
10-12月の前の期である7-9月(2Q)と比べて
3.0%伸びた
という比較です。
年率換算とは、+3.0%の成長率が
1年間続く場合の成長率のことです。
「あれ、四半期で+3.0%を1年間続けると
+3.0% x 4 = 12.0%ではないの?」
「でも12.7%と発表されています。
おかしいのではないですか?」
いいえ。
細かい話ですが、おかしくないです。
これは端数を入れるかどうかの差です。
実際の発表値では、3.0378%でした。
1.030378^4 = 1.12716(12.7%の成長)
ですので、計算と合致しますね。
ちなみに、これだけの成長を
日本は過去にも経験しました。
1968年、12.4%の成長でした。
この年の日経平均をみてみましょう。
株価が一本調子で35%も上がった年です。
もし今年も同じだけの比で上がった場合、
日経平均は36,800円になります。
…まさか。
さすがにそこまで楽観できませんね。
ところで、昨年2020年の
1年間のGDPの伸び率は、
2019年に比べて-4.8%であった
ということも合わせて発表されました。
これが経済成長率です。
2019年を100とすると
2020年は95.2であったことになります。
2021年で仮に12.7%成長すると、
2019年を100とすると、
95.2 x 1.127= 107.3 となります。
2021年1月時点で、
IMFは、2020年の日本のGDPは-5.1%(2021年は3.1%)
世銀は、2020年-5.3%(2021年は2.5%)
という経済見通しのレポートが出ていました。
実際の2020年の成長率は、
速報ベースとはいえ
-4.8%だったので、
思っていたより「ずっと」良かった
ということです。
リーマンショックの影響があった
2009年は-5.4%で、
それに匹敵すると覚悟していたわけです。
そりゃ、嬉しくて株は上がりますね。
イギリスの経済成長率は、先週発表があり、
2020年は-9.9%と日本の倍速の落ち込みでした。
これは、英国としては
1709年(-13.4%)以来の
記録的に大きな減少率でした。
500年に1回の寒波が理由だったようです。
フランスも昨年は-12.5%で
統計開始(1950年)以来
最悪の落ち込みです。
なお、日本の速報値は一次速報値です。
一次速報というからには、
二次速報というのもあります。
GDPを推計するには、
月次経済統計を使います。
個人消費や家計調査、
輸出入は国際収支も使います。
そのほか、たくさんの統計データを
総合的に計算する必要があり、
ひとまず1次速報を出します。
この段階では、法人企業統計が足りないので、
設備投資や在庫投資の推計を加えて、
二次速報を出します。
一次速報値から二次速報への改定幅は、
Q単位で0.19%、年率0.75%です(内閣府発表値)。
2021年二次速報は3月9日(火)8:50
2021年1-3月期の一次速報値は5月18日(火)8:50
となっています。
(著者注)
名目GDPも一時速報で発表されており、
2.5%伸びています。
名目GDPとは、
市場で取引される実際の価格を
そのまま用いて計算する方法です。
実質GDPとは、
インフレ(あるいはデフレ)による
物価変動の要素を取り除いたものです。
名目GDPを実質GDPで割ると
GDPデフレータという指数になります。
これは、株式における
NK225 / TOPIX = NT倍率
と同じ考えになります。
奥村尚