奥村式資産運用術

鬼滅の刃から期待する日本産業

From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

先日、鬼滅の刃を鑑賞しました。

昔からマンガやアニメには
親しんでいたので、

ところどころ過去の名作との共通点を見つけ、

北斗の拳、妖怪人間、サイボーグ009
と頭の中で重なり、楽しめました。

話を突然切り替えますが、

日本は、戦後、製造業を中心に国を作り、
一時は鉄鋼や造船などで世界を席巻しました。

その後、国としての
付加価値の中心は家電などにシフトし、
昭和の終わりころには、

「Japan As No.1」

などと言われるようにも
なったことがあります。

モノづくりは、世界No.1だったのです。

モノづくりで栄えた1980年、
世界の企業時価総額をみると、

top50のうち、日本が38社ありました。

世界1位はぶっちぎりNTT
そのあとは当時の都市銀行が並び、

製造業でのトップはトヨタ
そのあとは新日鉄、日立、松下、東芝
と続きました。

一方で、

現在の勢力図は大きく変わっている

のはご存じでしょう。

2019年時価総額TOP50では、
GAFAMをはじめとする米国勢が
時価総額上位を独占、中国5社、韓国1社。

日本はトヨタがかろうじて1社、
はいっているのみです。

世界の変化についてゆけなかった
個々の企業の責任もあるでしょう。

産業の育成に失敗したという点では
国家レベルでの責任もあるでしょう。

日本の産業構造としては、
製造業の割合が高く、

やや古いデータですが、

欧米諸国が12~14%(ドイツを除く)に対し、
日本は約19%です(いずれもGDP比、2013年、
国連National Accoints Mail Aggregates DB)。

まだまだ、製造業中心なのですね。

2013年から2020年において、
日本の家電メーカーは
パソコン、スマホ、白物家電の
大半が撤退していますから、

さらに比率が下がってきているはずです。

欧州ではドイツが日本と近い比率で
製造業の割合が高いのですが、

日本と異なり、世界に対する
明確なアドバンテージがあります。

自動車です。

ドイツにおける自動車のような
競争力を誇る産業は、

日本には見当たりません。

ドイツ社は、特に利益率の高い
高級車というジャンルでは、

圧倒的なブランドとシェアをもっていて、
日本は戦えるレベルにありません。

ダイムラー(メルセデスベンツ、
マイバッハ、スマートがブランド)、

BMW、フォルクスワーゲン
(傘下にアウディ、ポルシェ、
ランボルギーニ)は、

ブランドとして圧倒的です。

トヨタがただ1社、
踏ん張ってくれていますが、

日本が得意なエンジンの技術は
もはや不要になっていて、

あと10年もすると
ガソリン車は販売できなくなります。

最も重要な、
自動運転や電池性能の制御技術が、

世界のトップレベルから、
どんどん引き離されている状況です。

いずれ自動車も
家電がそうであったように、
M&Aがすすみ、日本メーカーは撤退する
ことになるだろうと見ています。

かつては、カメラや時計、家電やテレビが
その地位を保っていた時期がありますが、

もはやカメラや時計は一部の高級品を除いて
世の中に必要とされておらず、
スマホに吸収されてしまいました。

そのスマホも、
日本の多くの会社が撤退しています。

パソコンも、日本ブランドは全滅です。

テレビを含む家電は、
韓国や中国に負けてしまいました。

大手電機メーカーの大半が撤退しています。

自動車もそうなる傾向が始まっているのです。

自動車がなくなると、この先
日本経済を支える基幹産業が存在しません。

しいていえば、

センサーやモーターのような電子部品、
いわゆるデバイス、が強いのですが、

他社製品の中に組み込まれるので、
自社ブランドを確立できず、
性能競争で少しでも劣ってしまうと
あっという間に地位を失います。

同じ電子部品でも、インテルのような
唯一無二のCPUメーカーであれば、

“インテル入ってる”というシールを
パソコンに張り付けさせて
ブランド価値を高めることができるのですが、

スマホを買う時に、
”ソニーのフェリカ入ってる”とか
“TDKのフェライトコア入ってる”など
のようなアピールは聞いたことがありません。

こういう大きな産業改革においては、
個々の企業では限界があると思います。

インターネットを米国が国策として育てた
ように、国家が関与する必要があるのです。

誰も目をつけていない分野は、
最も可能性があります。

たとえば、マンガ。

この文化は、日本が独自に育て上げ、
世界的にもクールジャパンの代表的なもの
になっています。

世界でも、
日本が圧倒的な競争力を保っている
数少ない分野です。

しかし、どの程度の市場があるのか?

というと、案外小さいものです。

本としてのマンガの売上は、
5000億円程度で、この大きさは、
コンテンツ全体の1%以下です。

世界的にも、米国で1千億円、
中国では2500億円(いずれも2018年)
でした。

しかし、マンガが持つ
とてつもない説得力は、
文章をはるかに凌駕します。

えらく長く理解するのが難しい小説や文学も、
マンガにすると理解しやすく、
しかもあっという間に読み終えられます。

説得力が高く強いのですね。

里中満智子は日本有数の漫画家ですが、
オペラのストーリーをマンガにしています。

たとえばワーグナーの指輪などは、
実に壮大で長い時間をかけて
理解しなければいけないのですが、

マンガになっていると、
サクサク理解できます。

横山光輝の日本史もそうです。

マクベスも、聖書も、
マンガにするとわかりやすくなる
ということです。

学校で習う音楽、美術、日本史は
(どうせ、どうでもよい教科であろうし、
専門的にやっている子供にとっては
さらに必要のない教育ですね)、

いまのつまらない教科書はやめて、
皆マンガにすると面白くなると思います。

要するに、

国を挙げてマンガの提案をしてみると面白い

と思います。

作る側の技術という点でも、
義務教育にもマンガを取り入れると良い
とさえ思います。

マンガであれば、食っていける技術を
身に着ける要素にもなります。

そんなことを考えながら、
鬼滅の刃劇場版を鑑賞したのでした。

奥村尚