From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
日本がシルバーウィーク、
連休で休んでいる間、欧米では、
おおきなニュースで相場がゆれました。
大手金融機関がマネーロンダリング
の取引に利用された
という資料を、
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)
が公表した事です。
このニュースを理解するにあたり、
前知識を持っておく必要があります。
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1.CRSの存在
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世界の銀行間で、共通報告基準
(Common Reporting Standard,CRS)
というものがあります。
2017年から始まった制度で、
海外の非住居者が口座を持つ場合、
現地の金融機関は各国の税務当局
を通じて、相手国政府に、
その口座情報を共通基準で
報告するものです。
CECDが基準を策定しましたが、
世界98か国が参加しており、
匿名性をもった口座で経済を
発展させてきたケイマン諸島や
シンガポール、スイスも参加
していますので、
逃げることはできません。
●個人情報
氏名、住所、生年月日、居住国、
納税者番号(日本だとマイナンバー)、
口座番号
●収入情報
利子、配当、株・社債の譲渡代金
などの年間受取総額
●残高情報
預貯金残高、有価証券残高
などの口座残高
2018年秋時点では、口座残高
100万ドル以上の個人口座が
対象となり、
口座残高1000ドル以下の小口個人口座
25万ドル以下の法人口座は、
当初は対象外としていました。
今は、もっと金額が下がっていて、
海外口座の残高が5千万円以上ある人は、
税務調査で国外財産証書の提出
を求められます。
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2.米国の制度、FATCA
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実は米国はCRSに参加してません。
そのかわり、同じような制度、
外国口座税務コンプライアンス法
(Foreign Account Tax Compliance Act,FATCA)
が2010年から運用されています。
米国政府が、米国籍をもつ
海外銀行の口座情報を、
米国の税務当局(内国歳入庁、IRS)に、
報告を義務づけているのです。
報告義務を果たさない銀行には
ペナルティが課されます。
1,2の制度は、富裕層の税金逃れ
だけではなく、犯罪、テロに
関係するマネーロンダリング
を防止するために、
相当に効果が上がっています。
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3.今回のニュースを公表したICIJ
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ICIJは、1997年に設立された組織で、
世界主要国を中心に200人程度の集団で、
それほど大きな組織ではありませんが、
65か国も参加しており、有名な
ジャーナリストも多数参加している
ことから、一定の影響力があります。
2014年、パナマ文書を入手し、
組織的に一気に世界に公開した
ことから、有名になりました。
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4.ようやく本編
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1,2,3を事前に理解して初めて、
9月21日のニュースを理解できる
ようになります。
ICIJのHPにある記事をみる限り、
大手銀行の幹部が、
不正の疑いがあると知っていながら
送金を許可させた疑惑がある、
という内容でした。
銀行が主体的にかかわったかどうか
は明記されていませんが、
1999-2017までの期間で、
HSBC,ドイツ銀行,JPモルガンチェース、
スタンダードアンドチャータード、
ニューヨークメロン、などの
名門銀行の口座を使って送金された
疑わしい取引が過去18年間2兆ドルある、
という内容です。
それにより、名指しされた銀行は
株価5%程度の下げとなり、
金融株全体が売られ、ひいては、
市場全体の下げを演出した、
ということになります。
今回の記事には書いていませんが、
記事で名指しされた中では、
HSBCは、2012年にも、
マネーロンダリングの問題で
米司法省に罰金を19億ドル
支払っています。
さらに、
2018年にも外為の不正取引の問題
を起こし、司法省と1億ドルで
和解しています。
スタンダードアンドチャーター銀行は、
2012年に、イランへの送金を報告せず、
営業免許取り消しになりかかり、
6億7千万ドルの罰金を払っています。
おそらく、中国、イランへの送金が
からんだ問題も今回の一連の案件
に含まれているでしょう。
日本への影響は、限定的であろう、
と見ています。
奥村尚