奥村式資産運用術

値動きに騙されないデータ

From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

内閣府がGDPの4-6月期(2Q)の一次速報を出しました。

前期(1-3月期,1Q)比 -7.8%と
3四半期連続でマイナス。

年率換算では、 -27.8%と
戦後最悪の数字となっています。

しかし、

日経平均は100円安からスタートし、
前日比192円61銭安で引けました。
(※2020年8月17日)

「もっと下落するはずでは?」
と思った人も多いのではないでしょうか。

戦後最悪ということは、
戦後75年間で最悪の成長率を示していますが、

前日比200円安程度であれば、
毎日のように起こる小さな下落です。

75年ぶりの悪い数字となると、
日経平均が1500円安になってもいいはずですよね。

これが、“相場の織り込み”です。

今回は、織り込みとデータの見方について
詳しくお話していきたいと思います。

まず、相場は悪材料に弱いのですが、
ある程度覚悟しているときには、

その通りに悪い情報が出ても、
耐えしのぐとされています。

織り込みはそのことを意味します。

今回でいうと、2Qは今年の四半期の中で
最悪の数字であろうことは最初からわかっていました。

4-6月期としては、欧州で発表しているところも多かったので、
数値水準も概ねわかっていました。

欧州の前期比は、
フランス -13.8%、ドイツ -10.1%、イタリア -12.4%、
スペイン -18.5%、英国は -20%超でした。

米国に至っては4-6月期前年比 -40%超 です。

ここまで読んで、
「フンフン、なるほど」
と考えてしまったら、

あなたは騙されやすい人です。

これらの数値は、
ダマシを入れ込んであります。

ここで、データの読み方を復習しておきます。

ニュースにあった、日本のGDP成長率 -27.8% というのは、
4-6月期の悪い成長が3-4Q続いた場合の、
年間換算での1年の成長率予想です。

GDP成長率は、1年を3ヶ月ごとに区切って、
1-3月期(1Q)、4-6月期(2Q)、7-9月期(3Q)、10-12月期(4Q)と
4つの四半期(Q、クォータ)に分けます。

今回は、2Qの発表でしたが、
1Qに比べると-7.8%悪化した、
ということになります。

4-6月期だけを考えると、
1-3月期の-7.8%にしか過ぎません。

欧州は、全て1Qと比べた数字ですので、
日本より影響が大きいことがわかります。

一方で、米国の表現は、
2020年1-3月期ではなく1年前の同じ時期。

つまり、2019年の4-6月期に比べて
-40%超悪化したと書いています。

前期比(2020年1Q)では、-32.9%です。

マスコミは、大きな数字になるような表現で
注目させようと企んでいるわけです。

GDPには、『名目』と『実質』の2種類あり、
特に断りがない限り実質GDPを使用します。

名目GDPは、物価が上昇しても
値上がりした分の価格をGDPに入れ込みます。

実質GDPは、物価が上昇した分を除去して、
実質増えた付加価値分を計算して入れ込みます。

例えば、卵の価格が昨年は200円、
今年は300円に値上がりしたとします。

年間1万個の卵を売ったとすると、
昨年のGDPは名目も実質も、

200×1万=200万円です。

しかし、今年のGDPは、
名目GDP300万円。

実質GDPは、値上がりした100円の影響を
除去するので200万円となります。

名目GDP を、実質GDPで割ったものを
“GDPデフレーター”といいます。

卵の例では、 300 ÷ 200= 1.5 と計算されます。

GDPデフレーターが
1以上になるとインフレ、
1以下になるとデフレ、
を意味します。

今回の内閣府発表の実質GDPと名目GDPの
成長グラフを参考までにどうぞ。

最後になりますが、
少しだけ安心できる情報をお伝えします。

ダマシではありません。

7-9月期(3Q)の発表はずっと先ですが、
前期比2桁のプラス成長が予想されています。

日本の2020年通期のGDPは、
前年比 -5.5% ~ -6.0% 程度で着地する
という予想になっています。

悪いニュースばかりが目に入りますが、
マスコミの情報に騙されないよう
トレードをしていきましょう。

奥村尚