奥村式資産運用術

WIT原油がマイナスにまで落ちた理由

From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

おはようございます。

4月20日。

NYMEX市場で、
WTI原油がマイナス40ドルになりました。

この値段は相場の中で瞬間に起きた安値ですが、
引け値までマイナス37ドルでした。

商品相場が、マイナスになった。

原油を買うと、お金がもらえるという構図です。

私は驚いて、ひっくり返りました。

実は、シカゴのCME取引所から、
NY原油先物価格はマイナスになる可能性はある、
とアナウンスした事実があります
(2020年4月15日,bloomberg)。

そのカラクリを説明しておきます。

商品の決済は、
株式やFXのように反対売買で決済もされますし、
それが普通です。

が、一部の商品。

例えばWTI原油の取引では、
現引きと言って、
買い手は現物を引き取る決済方法もあります。

売り手も、相場での売り建玉を、
現物の原油を送油して現引させて
決済とすることができます。

原則として、
WTIの原油を取引する受け渡し場所は
オクラホマ州クッシング市であり、
そこで現引きすることが定められています。

クッシング市は米国原油のハブで、
生産地からパイプがつながっており、

また、大都市の消費地まで、
パイプがつながっています。

さて、米国エネルギー情報局(EIA)は
クッシング在庫を発表していますが、

コロナの影響で原油のニーズが
極端に減ったため、
在庫は急激に増えた状態でした。

クッシング市の在庫がたまってくると
タンクが満杯なわけですから、
これ以上受け入れることができなくなり、
原油は送油先がなくなります。

その場合、他の貯蔵地域を
使うこともできるようですが、

コストをかけてトレーラーで
移動させる必要がある。

ウィルスの影響で、
人手の確保もコスト高を招きます。

で、売り手はそれをいやがり、
成り行きで投げ売りをしたために、
マイナスになってしまった。

原油先物価格は、20日に、
五月限売り、6月限は買い、という
ポジションのロールオーバー(限月交代)が集中しており、

そのためにマイナス価格が
起きたのでした。

これはWTIの特殊要因で、
他の市場、たとえばICE(旧ロンドン国際石油取引所)で
取引されるブレント原油(Brent Crude)は、
同じ時期、このようになっていました。

原油の値段がマイナスにはなっていませんね。

しかし、下がっているという点では
WTIと変わりません。

世界的に原油価格は
下がってきています。

この動きはしばらく世界的に続くと思いますが、
その影響の話は、次回にします。

奥村尚