From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
3月13日(金)、日経平均は
最安値 16690.6まで下がりました。
この時のPBRは、0.804です。
いろいろな理由で下がったわけですが、
どのような理由にせよ、過去にPBRベースで
ここまで下がった例は一度もありません。
要するに、戦後最安値の瞬間でした。
さて、週が明け月曜日の朝になったとき、
FRBの声明が飛び込んできました。
FRBが緊急利下げを
決めたという発表です。
(米国東時間)3月15日、
FRBは声明で1%という
かつてない大幅な引き下げを発表。
引き下げ後の金利は
0-0.25とした、というものでした。
まさか。
私は驚きました。
「これは、おそろしい無駄撃ちになる」
そう直感しました。
NYダウをただちに確認してみると、
このようになっていて、さらに驚きました。
1,000ドルの上げではなく、
1,000ドルの下げになっていたからです。
今回のFRBの対応を、
トランプ大統領は「素晴らしい」と
評価しています。
14日に大統領は、
「FRBに追加利下げを要求したうえで、
ㅤ言うことを聞かなければパウエルFRB長官を
ㅤ解任する権限がある」
と発言していますので、
プレッシャーをかけたのでしょう。
FRBは、3月3日にも、
(1.5-1.75%を1.0-1.25%に)0.5%下げたばかりですが、
その当時、パウエルFRB長官は、
「利下げが感染率を低下させたり、
ㅤサプライチューンの混乱を
ㅤ収束するわけではない」
と、自ら発言しています。
では、なぜ、
FRBは金利を下げたのでしょう。
通常は、金利を下げると、
株は大きく上昇するからです。
しかし、この時の3/3時点で、
市場ではFRBの利下げは予想しており、
織り込み済み、むしろ、
もっと、もっと、下げることを
期待した金利先物取引が盛んでした。
中途半端な金利下げでは、
市場は「もっと、もっと」を
要求することは目に見えていました。
この時も、FRBは
ホワイトハウスの圧力に屈したわけですが、
「too late , too small. (遅すぎて、少なすぎる)」
と市場は思ったのです。
結局、この利下げは、
期待を裏切ったという市場の反応で、
さらに金利は下落。
株式も暴落し、
無駄撃ちにおわりました。
いや、下手に打ったので、
しっぺ返しをくらった形になった。
FRBの期待に沿わずに
株は暴落したのですから。
「キジも鳴かずば撃たれまい」
FRBというキジは、
鳴かなければ市場に打たれなかったのです。
その記憶も残る同じ月に、
また3/16に同じことをしてしまった、
というわけです。
FRBとしては、3月3日以降、
またまた20%の株価暴落が起きたので、
その対策で利下げをしたということになりますが、
1%もの緊急利下げというのは、
かつてのFRBからは考えられないことです。
FRBの議長といえば、
世界の金融界の頂点に君臨する
神のような存在です。
「FRBは政治から独立して的確な判断を行う」
と言い切ったのは
グリーンスパン元議長ですが、
パウエル議長になって、
変わってしまったのでしょうか。
しかし、予想通り、
今回の金利1%下げの反応も
市場は逆にとらえ、
株価がさらに下がりました。
「FRBがうろたえるほどひどいのか、こりゃ大変だ」
という意識で受け取られ、
暴落という火に油を注いだ格好です。
今回は、巨額資金を投入して、
7,000億ドルの債券を購入し、
お金を市場にばらまくことも発表しました。
先週、既に1兆5,000億ドルのお金の供給を、
レポ取引市場(現金を担保に債券を貸借する銀行間取引市場)に
行うと発表したばかりです。
要するに、QEも久しぶりに復活するのですが、
これは「too large」です。
結局、今回は、
「too early, too large」に
なっていると思います。
いずれ、この材料を消化し、
米株はポジティブに、
反転に向かうものと思いますが、
今は米株市場が理性を失っていて、
本来の
金利下げ->ドル安(円高)->米株高->日本株高
という関係にはなっていないのです。
こういったときには、
放置プレイがもっとも良いと
私は考えていますが、
特に米政権は、
大統領選がかかっているだけに、
あれこれ手を加えて、蛇足がたくさん
生えてきているように見えます。
これを書いているうち、
3/16 14:00すぎ、
日銀は、年間6兆円の投資を
倍の12兆円にすると発表しました。
それまでのマイナスに
推移していた日経平均は、
少しだけ反転しましたが、
日米ともに、笛吹けど踊らずと
いったところでしょうか。
奥村尚