From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
おはようございます。
株式マーケットは合理的に動いている
~リスクに対する動きの分析からわかること~
前回は、リスク分析をFXで行いました。
ポンド円、ドル円における大きなイベントにおける
リターンをバーグラフで示しましたね。
同じ分析を、今回は株式で行います。
米国株式としてNYダウ、
日本株式として日経平均をとります。
まずは、通期における推移をみてみしょう。
為替との対比も行いたいので、
期間は前回と合わせて1988.2.10 – 2020.2.10としています。
長い期間を比べると、この2つは
推移の形が明らかに異なっています。
NYダウは、現在進行形で
史上最高値を更新しています。
素晴らしいのは、見事に右上がりであり、
2008年あのリーマンショックでさえも
これだけ長期で眺めてみると、ディップ(凹)の
一つにすぎないとがわかります。
これに比べて日本は、1980年代のバブルで
4万円弱をつけたあとは下がるだけ下がり、
1万円割れも何度か経験した上でなんとか
回復の道半ば、といったところでしょう。
この期間の経済分析に関しては今回は述べません。
あくまでも、市場のリスク分析を
淡々と進めてみます。
ここで、リスク分析とは何かを補足しておきます。
金融商品を評価するにあたり、
リスクを計算する必要があります。
たとえば、日経平均が1000円のときに
100円動いたとしたら10%の変動です。
しかし、日経平均が2万円の時に
100円程度動いたとしても、
0.5%の変動にすぎません。
この変動の激しさをリスクとして、
測定するのがまず最初の一歩です。
為替の世界では、リスクの事をボラティリティ
と言い換える事がありますが、計算定義は同じです。
このリスク(もしくはボラティリティ)の大きさは、
金融商品によって大きく異なります。
数値を言ってもピンと来ないと思いますので、
バーグラフにしてみます。
単位は同じで、値を100倍にすると%になります。
測定期間は揃えています。
明らかにFXより株式の方がリスクが上ですね。
これは、値動きの変動が、
株式の方がより大きい事を示しています。
さて、株式市場の日米比較を
各イベント単位でみてみます。
1997:アジア通貨危機
1998:ロシア通貨危機
2001:同時多発テロ
2008:リーマンショック
2015:スイスフランショック
2016:ブレグジット国民投票
バーは、イベント前後の20日の平均リターンを
その当時のリスクで割っています。
これは、リスク調整後リターンというものですが、
要するに、この数値が大きい方がリターンは大きい、
と思ってください。
まず、期間全体として言えるのは、
米国株式のリターンの大きさです。
通期でのリターンは一日単位に直しても
大きく日本を上回ります。
イベントは、当時のいわゆる危機を
選定していますので、例外を除いて
株式は全て下落し、全てリターンは
マイナスになっています。
唯一の例外はブレグジット国民投票時のNYダウです。
NYダウだけ、リターンは小幅ながらプラスでした。
ちなみに、肝心の英国FTSE指数は、
同じ計算を行うと-0.26でしたから
日経平均を上回るインパクトで
英国市場は深刻に受け止めていました。
株式でも、FXと似たような事が起こっていることに気が付きます。
その危機が起こっている現場が
最も深刻な打撃を受けている、
ということです。
アジア通貨危機は、日本が当事者に近いため
日経平均が最も打撃を受けるやすく、実際に
NYよりも大きなマイナスとなっています。
ロシア通貨危機は、
日米とも最も大きなマイナスとなっていますが、
これは今回の全てのショックの中で一番
大きな影響があった事を示します。
同時多発テロは米国が一番影響を受けたのは
当然と言えば当然ですね。
スイスフランショックは、
日本はショックと言えるだけのショックを感じませんでした。
事件の場所が遠すぎてピンとこなかったのでしょう。
リーマンショックは、
ショック時は米国より(僅かながら)日本が
より大きく影響を受けた事もわかります。
こうしてみてゆくと、
株式マーケットというのは、
いろいろなリスクに出会うなかで
一つ一つのショックを合理的に解釈して
消化している事がわかります。
では、次回をお楽しみに。
奥村尚