From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
おはようございます。
ある国、例えば米国の経済の状況、
つまり、景気が良いか悪いかを知るには、
まずはどんな指標を見ると良いでしょう。
何かひとつだけを見て、「だから良い」と
言い切ることはできないのは明白です。
人間で例えると、聴診器だけあてて、
はい、あなたは健康です、病気です、と
言い切るようなものです。
しかし、聴診器をあてるというのは、
最も重要な基本検査、と言って良いでしょう。
先人たちは、聴診器の音で、
いろいろな病気を聞き分けることができる、
そして何冊もの本が書ける程、
研究をしたそうです。
(これはたとえ話なので、
もしかすると、医学的にはもっと基本が
あるかもしれません)
ということは、経済が病気でありそうなことは、
その指標だけでわかるようにも思えます。
では、経済、景気を見るときに、
まず注目すべきポイントはどこでしょう。
答えは、「雇用」です。
雇用状況は最も重要な指標です。
雇用状況が悪いと、
お金が流れなくなるのです。
お金の流れは、経済の血です。
お金が流れないと、人間は死にます。
仕事がない、あるいは不安定な人は、
生活が不安になり、お金を好んで
使おうとするはずがありません。
仮にお金を十分に持っていても、
仕事が不安定であれば、
不要不急の支出を控え、倹約するでしょう。
そうした人の割合が増えると、
経済がうまく立ち行かなくなります。
逆に、安定した雇用であれば、
今月も、来月も、その先も、
給料が出ると期待できますから、
計画的に消費に回せます。
時には、少々無理をして何か買っても、
なんとかなるだろうという
気持ちになるものです。
米国では、雇用統計は
労働省が毎月発表します。
非農業部門雇用者数、失業率が特に有名ですが、
平均時給、週労働時間など、
他にも10項目以上同時に発表されます。
毎月、12日を基準日として、
12日を含む週の雇用状況を調査し、
その3週間後の金曜日に発表されます。
概ね、毎月第一金曜日と
覚えておくと良いでしょう。
NY株式市場が開く前の時間、
日本では夏時間 21:30頃、冬時間 22:30頃に
発表されます。
米国では、農業部門よりも、
非農業部門の産業比率が圧倒的に大きいため、
非農業部門の雇用状況が注目されます。
個人所得、個人消費にも大きく関係します。
米国は何といっても世界最大の
市場をもっている国で、
経済規模は世界一ですから、
世界中の市場参加者が注目する
指標であるといっても過言ではないでしょう。
さっそく、雇用統計と株価、
FXの関係をみてみましょう。
2019年9月に発表された雇用統計は、
非農業部門雇用者数
予想 14万5千人、結果13.6万人
(-9千人 これは14.6万人の-6%に当たる)
失業率 予想 3.7%、結果 3.5% (+0.2%)
でした。
雇用者数をみると、
予想より結果は悪いのですが、
一方では、失業率は 0.2%改善しており、
大変に良い結果です。
つまり、まちまちな結果でした。
FX市場は、発表後30分の動きは
このようになりました。
ドル円 open 106.724 close 107.11
(+0.386円 円安 ドル高)
ユーロ円 open 117.169 close 117.443
(+0.274円 円安 ユーロ高)
1.ドル円に注目すると、こうなります。
0.36168%だけ、円安になった。
2.ユーロ円に注目すると、こうなります。
0.23385%だけ、円安になった。
円は、ドルに対しても、ユーロに対しても、
安くなったのです。
3.このようなことがわかります。
米国の理由とは関係なく、
円はユーロにも安くなったので、
日本の理由で円安になった要素があります。
つまり、日米の理由でドル円が決まりますから、
円安になった量 0.386=日本の理由で円安になった要素の量0.274+米国の理由でドル高になった量 x
ですね。
米国の理由でドル高になったのは要素 xは、
x= 0.36168 – 0.23385 = 0.1278 %
です。
もし、この日米国の雇用統計だけが
世界のFX取引に影響したのであれば、
これが影響した分です。
一方、雇用者数は、-6%であるのに、
失業率は+0.2%であった点を考えると、
雇用者数 -6%の重み < 失業率 +0.2%の重み
であることがわかります。
これは、失業率は、
雇用者数の比率の30倍以上の
影響を持ったことになります。
この仮説が正しいかどうか、
10月の統計発表後にはわかります。
このように、少し手を動かすと、
ご自身のノウハウの蓄積に
なってゆくのですね。
最後に、日本の同様の統計に
関しても触れておきます。
雇用統計は、日本では厚生労働省が
雇用指数を発表するほか、
総務省が失業率を発表しています。
景気が悪くなっても、ただちに
職を失うことは起きないとされていて、
景気の動きに遅れて反応する指標です。
日本は、2019年4-6月期、個人消費は299兆円、
これは GDP540兆円に対して54%を占めます。
(内閣府 国民経済計算 より)
米国は、GDPの70%が個人消費です。
個人消費は、日本では内閣府が
4半期終了後1か月半後に1次速報、
その翌月上旬に2次速報を公表します。
米国では、商務省が
同様の指標を出していますので、
ぜひご確認ください。
奥村尚