From:奥村尚
空港のラウンジより、、、
おはようございます。
今回は、普段と違った角度で米国の繁栄の礎といったものをみてみます。
OECD加盟国において、税務当局間で金融口座情報を自動的に交換する国際基準、共通報告基準(CRS:Common Reporting Standard)というものがあります。
2018年以降、毎年特定の非居住者の金融口座情報を諸葛税務署長に報告し、その情報はOECD加盟国の税務当局と自動的に交換されるシステムです。
日本は2018年9月に初回の情報交換を行いました。
この時は、
・2016年12月末の残高が100万ドル声超の個人口座、
・2017年1月1日以降に新規開設した口座(個人、法人)
となっていましたが、2019年の9月の第二回目は、
・2016年12月末の口座残高100万ドル以下の個人口座
・全ての法人口座
に関して、2018年分の入金情報と残高も国税庁が入手する事になっています。
ただし、少額の口座は調査対象から外されます。
少額とは、
・口座残高が1000ドル以下の個人口座、
および3年間休眠している口座
・2016年の口座残高が25万ドル以下の法人口座
です。
日経新聞によると、100万ドルではなく、残高5千万円以上のものに関して国税庁が提供を受けるという記事も掲載されました。
5千万円という水準は、一般的には普通の人が海外にもつ金額ではないのですが、日本人の人数から判断して結構な人数の情報が集まると思われ、いわゆる富裕層の実態が精査される事になります。
CRSを適用する国には、ほぼ全てのOECD加盟国が参加しています。
EU内に金融秘密を守る国はもはや存在しません。
ところが、米国は参加していません。
FATCAという、米国以外の金融機関の口座に資産などを隠すことを防止する法律があるためです。
米国はFATCAの二国間協定を現在までに113の国や地域と締結しています。
CRSは類似した制度なので、参加の必要性がないとして参加を見送った経緯があります(2016年3月7日)。
しかし、
CRSは「参加国間で情報を共有する」双方向制度ですが、FATCAは「米国に他国が情報を渡す」と一方向です。
米国非居住の外国人(例えば日本人)が米国に持つ口座情報を、米国が日本の税務当局に対して共有する、という事は定められていないのです。
これにより、米国における非居住者の金融サービスのシェアは、2015年の8%から2018年には22%へジャンプアップしました。
ついでですから、世界のシェアtop10を確認してみましょう。
英米が突出している事が確認できると思います。
source:TAX justice network 2018
世界の富裕層が、一気に米国へ資産を移したのですね。
海外資本の流入です。
現在も続く米国の経済独り勝ちに関して、大きな要素がこんなところにもあるんですね。
今月は1ヶ月強、こうした調査を行うため(保養を兼ねて)米国やケイマンを旅することにしています。
では、次回をお楽しみに。
奥村尚