奥村式資産運用術

米中貿易摩擦の飛び火が日本に

From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

おはようございます。

今週の相場は前回のブログでお伝えした予想通り、相場も良い感じに上向いています。

前回ブログ:相場がもっとも下がる原因とは
https://j-i-s.info/j-i-s/nikkan_180711/

今回は、前回ブログでお伝えしなかったもし自動車に25%の関税がかかるとどうなるか、試算してみましょう。

目で確認したい人向けに数値も入れておきますが、数字が苦手な人は流し読んでください。

重要なのは関税がかかった時、どのように経済へ影響するかを「予め知っておく」ことです。

大きな資金の流れを知っておくと、株価が急落した時の対応も他の投資家よりすばやく行えるでしょう。

まず、日本車の生産台数はJAMA(日本自動車工業会)のデータによると、昨年(2017年)の1年間で969万台です。

そのうち、米国向け輸出台数は173万台(うちトヨタ 71万台=41%)となり、金額では4.56兆円(日本の米国向け輸出額の30%)一台あたり単価264万円となっています。

日本から米国へ輸出する車にかかっている関税は現在2.5%ですが、それが25%かかると仮定します。

増税額は、 25%-2.5%=22.5%です。

そして、関税をかけるアメリカの新車販売台数は2016年に過去最高の約1,755万台

(乗用車7,105,162台、小型トラック/SUV 10,445,189台)
を記録しました(Autodataより).

このうち、日本車のシェアは、トヨタ:2,449,587台 (14.0%)
(うち71万台は日本からの輸出=174万台が現地生産、ただしメキシコやカナダも現地生産としている)

日産:1,564,423台 (8.9%)
ホンダ:1,637,942台 (9.3%)
スバル:615,132台 (3.5%)
マツダ:297,773台 (1.7%)
三菱:96,267台 (0.5%)

となっています。

日本車メーカー全体では米国シェア約38%を占めており、BIG3メーカーの合計が約46%なので、いかにアメリカで日本車が売れているかがわかりますね。

売れる理由は、かつてのような安さではありません。

むしろ、平均より若干高い。
日本車は、中の上程度の価格帯です。

では、どこに魅力があるかといえば、なんといっても品質の高さです。

壊れないのです。

壊れないという事はランニングコストの低さに直結しますし、なにより、使いたいときに使える、実用に向くわけですね。

これは、車を足とする米国では大変に重要な要素です。

そして次にフォロー〈アフター)です。

アフターがしっかりしていると、整備サービスでお金がとれるし、顧客も安心できるので、また次の販売につながる良さがあります。

実は、この2つの要素は、ドイツ車などと比べるとむしろ劣っています。

たとえば、故障率の低さでは、トヨタ(あるいはレクサス)ではありません。

ドイツのポルシェがダントツで、最も壊れない車メーカーです。

アフターも、ドイツ車と比べると素晴らしいとはいえない。

しかし、ドイツ車は米国でも高価です。

特にポルシェは、1台の車体価格で日本車が何台も買えるほど高価なので一般の消費者向きの車ではありませんね。

しかも、いわゆる保険が圧倒的に高い欠点があります。

高級スポーツカーは、米国では保険が激高なのです。

いずれにしても、上には上があるけれど、平均的な価格ではちょっと良い車、というのが日本車なのです。

さて、仮に関税が高くなっても消費者は、文句を言わずに日本車を買ってもらえるのでしょうか?

輸出金額は 4.56兆円で、それに対して22.5%の追加関税がかかりますから、4.56 兆円 X 22.5% = 約1兆円
の関税がかかります。

当然これだけの金額が販売価格に上乗せされますから、実際に負担するのは、米国市民です。

1兆円という金額も凄いですが、これだけでは済まないのです。

その理由として、米国はメキシコやカナダから輸入する自動車に関しても、関税をかけようとしています。

なぜ日本車が関係するのか?

それは、日本車の半分以上がメキシコやカナダを含む北米で現地生産しています。

トヨタは3割が日本から輸出、7割は現地生産です。

もし、日本車にだけ関税がかかる場合は、日本車だけが割高になるので、当然他社にシェアが移ります。

今回はライバルのドイツ車をはじめとする欧州車も同じように関税がかかると
想定できますから、もっぱら米国産の自動車が売れる事になるでしょう。

その米国自身、メキシコで「現地生産」しているのですから、消費者のためにはなっていない、というのが、今後公聴会などでフォーカスされてくるでしょう。

関税がかかる「その時」、日本車のシェア低下もある程度覚悟しておく必要があります。

が、私は実際に発動されることにはならないとみています。

仮に発動されても限定的であり、ザルのように回避できるでしょう。

その時、日経平均は、おそらく2万円を切らない、とみています。

では、また次回をお楽しみに。

奥村尚