奥村式資産運用術

市場の「暗示」を知る方法

From:奥村尚
スペイン、バルセロナより、、、

いま、欧州に来ていて、独立問題の渦中の場所を見にきています。

「バルセロナでは市中あちこちで通行止めがあって、 その先にはストライキをした市民のデモが起こっている。
 それを軍隊が見守っている。」

などと言われていますが、そんなニュースはガセネタではないか?
と思えるほど、平穏な感じです…

ただ、これも、本日だけが平穏なのかもしれません。

さて、ファイナンスの世界では、impliedという言葉があります。
これは、僕の大好きな単語です。

impliedは、日本語に訳した途端、異なる意味になる可能性の高い単語でもあります。

日本語では「空気を読む(今なら流行語の忖度か)」という意味ですが、英語の文章的にはこうした場合、たぶんread between the line(言外の意味を読む)なんて言い方でしょうか。

unspoken ruleとか、bro(girl) codeなども、暗黙の…と訳されます。

こうして日本語の訳から類義語を探していくと、impliedの持つ意味とは、どんどん離れていく感じがあります。

「暗示する」という訳では、時にsilentという単語も用いますが、相場のフロントにいる僕としてはこれも静的すぎてちょっと違う感じがします。

やはり、相場にはimpliedという単語が最もしっくりきます。

impliedというのは、暗に「示唆する」という意味合いを強く持っているからです。

「債券相場が暗に示唆する為替レートはxx」とか表現するとわかりやすいでしょうか。

しかし、この例えでは本来、債券市場は為替市場に圧倒的にインパクトを与えますので、示唆する間接性というよりはより直接的な影響になるので、暗に…という意味は含まれないわけです。

ここが少し難しいのですが、相場では、もっとインダイレクトな事柄にimpliedを使います。

例えば、こんな例では、「示唆する」という意味がぴったりです。

英国の公認賭け屋*(bookmaker,bookie.)では、一定の参加者が考え、金をかけて正しい事を主張し、そしてギャンブル的要素を楽しむ仕組みを
つかさどっています。

*英国では賭けは合法で外国人も(もちろん日本人も)
参加する権利がある=ブッキングに参加できます。
広く参加者を募ることで、市場が形成され、オープンで公平な取引が出きるというわけです。
これは東証と似ていますね。ついでに書くと、その時のオッズで確定して買う指値(Fixed-odds betting)と投票だけしておき、オッズは締め切り時の今はまだわからないオッズで買う成行(Starting price)の2つの賭け方があります。これも株と似てますね。

ロンドンでは、最大手William HillやLadbrokersといったブックメーカーは、店舗は探さなくても自然に目に入ってくる、日本でいえば宝くじ売り場のような存在です。

よく例に出されるのは、オリンピックで金メダルを取る選手は誰か、という賭けです。

まだ出場選手すらきまっていませんが、わかりやすくスケート競技で、こんなデータが出ていたとしましょう。

選手        オッズ
ネイサンチェン   3.5
羽生結弦      6.0
フェルナンデス   8.5

オッズが出ていると、確率が計算できます。

ある事象が起こる確率を P とすると、Pが起こらない確率は 1-P になります。

その事象のオッズはこの2つの値の比
P/(1-P)として計算できます。

Odds = P/(1-P)

P=Odd/(1+Odds)

ここで求めたPこそ、市場が示唆する確率です。

オッズ1.0で確率50%
オッズ4.0で確率20%
オッズ8.0で確率11%と計算できます。

オッズ8.00(確率11%)で1ポンドをかけておくと、当たった場合、掛け金1に加えて、1/0.11≒9 ポンドを受け取ります。

1 かけると、10 戻ってくるんですね。
8:1 とか、8/1 という表記をする賭け屋もいます。

英国競馬でも同様の表記で賭けをおこなっています。

このような『市場が示唆する原理』を利用して、オプション取引の価格(プレミアムといいます)を使って、市場が示唆する価格変動率(インプライド・ボラティリティ)を求め、その大きさをリスク指標にする手法は、シカゴ市場の恐怖指数(VIX指数)としてあまりに有名です。

次週、VIXに関する話を掘り下げます。
お楽しみに。

奥村尚