From:奥村尚
東京のオフィスより、、、
先々週、先週の続きです。結局3回シリーズとなりました。
今までは、戦後から続く今に至る日経平均を通して相場をながめながら、投資期間によるリスクがどう変化したかを全体像として見てきました。
今日はは、具体的な日を決めて、それ以降のリスクの推移を少し詳しくみてゆきたいと思います。
まず、特別な日を二日だけ決めて、その日に投資をした場合、日数を重ねると、リスクがどうなっていったかをみてみます。
最初の特別な日とは、東証が戦後最初に稼働した日、1949年5月16日です。
これは、「もし、戦後最初の日に株を買ったら、 リスクは日を追うにつれてどうなったかを見る」ということになります。
もう一つの特別な日とは、1990年1月4日です。
日経平均最高値はその前営業日である1989年12月29日でした。
39915円です。
翌営業日である1月4日は、少し下がって38712円ですが、この日に投資したばあい、最高値圏で購入したわけですから、リターンは常にマイナスであることになります。
ピークの時に買った場合、リスクの推移はどうなっていたかを見たいと思ったのです。
通常、リターンとリスクの双方を合わせてみてゆくのですが、今回は話を単純化するため、リスクのみを見ます。
この特別な2日に投資したばあいのグラフが以下です。
ヨコ軸は経過日数、縦軸はリスクです。
原点に近い位置では、経過日数が少ないため、リスクの計算上、値が大きくなります。
リスクは、変動率の平均になるので、二日経過後のリターン変動率、三日経過後のリターン変動率、の値はどうしてもその時の相場次第で大きくブレるためです。
ですので、出だしのリスクは無視してください。
さて、形を良くみると、似たような傾向に気づきます。
・リスクは日数経過と共に極大値まで上がり、その後は下げてゆく
・全体的には下げてゆく中で、突然ピョコ、と大きくリスクが上がる時がある
という点で共通しています。
1949年のグラフ(赤)は1度上がっています。
1108日から1170日目の1か月間。
1953年2月から3月にかけての下落になります。
特に3月5日(1144日目)は10%下げました。
ニュースを調べてみると、この日、スターリンが死亡したと伝えられ、それで株価が暴落したようです。
その後戻しますが3月30日には再び6.7%下げ、相当乱高下したのでリスクが急上昇したのですね。
1990年のグラフ(緑)は3度上がりました。
86日経過後2000年4月17日、および、
296日経過後2001年3月21日、
2163日経過後2008年10月の1か月間。
2000年4月17日は、日経平均が1426円下がった日です。
ITバブル崩壊で極度の暴落が起こりました。
2001年3月21日は、日経平均が913円上がりました。
下がったのではなく、一気に上がったのです。
前日(19日)日銀がゼロ金利政策を発表したためです。
上がったのも変動ですから、リスクとして計算されます。
2008年10月は、特定の一日ではなく、1か月間ほぼ毎日大きなリスクが起こりました。
リーマンショックです。
世界中に不況を起こした大事件でした。
リスクをグラフにするだけで、特定の日には「何か」が起きているということが明確にわかるほどのリスクの上昇は、それなりのニュース性をもつ大きな事件である、ということでしょう。
こうしたニュースは例外的に大きなものなので、そうした事変さえなければ、リスクは最初は上昇するが、あとはなだらかに下がると思ってよさそうです。
それを確認するため、もう少しケースを増やしてみてゆきましょう。
先に上げた特別な日は私自身が確認したかったので、一日単位でリスクを算出しましたが、案外手間がかかるので、もう少し大雑把な日単位で算出したものを掲載します。
投資時期の選択は、考えれば考えるほどきりがないので、恣意的な選択はやめて、ランダムに特定の日を本日までの期間でまんべんなく11日程、選択しました。
縦軸がリスク、横軸が経過日数です。
全て、500日投資した場合のリスクの曲線を示しています。
先ほどと異なりリスクの計算は毎日ではなく、10日ごとに、100日を超えたら100日毎にリスクを算出しました。
したがってカクカクしています。
全体の傾向としては、投資直後リスクが上がってゆき、その後だんだん下がってゆく傾向があるのがわかります。
例外もいくつかみられますが、概ね、そんな傾向がわかりますね。
世の中、いろいろな事件やイベントがあり、日々リスクは変化し、一様ではありません。
一方、理論的にリスクとリターンを示すには、毎日毎日の政治イベント、世界の情勢の変化を一様に乱数としてちりばめてリスクとして計算します。
しかし、実際の世界では、ある特定の日や期間に事変が起きるので、その時点を境にリスクが大きく増加することになり、その時点(や期間)固有の歪が目立つことになります。
特にスターリンが死んだとか、リーマンショックがおこったなど、スケールの大きな事件があると、リスクはその時点で一気に増加するので最初の特別な2日のケースで示したような大きく上昇して、ふたたびゆっくり下がる形になります。
実データを用いた解析を行うと、理論ではわからない事実がくっきり浮かび上がりますね。
それを考慮したモデルで再び理論的にあてはめてシミュレーションを行う事で、理論もリファインがされてゆきます。
実証と理論と比べる事で、その理論の妥当性も理解できますし、その過程で実証でも理論でも存在しない誤った解釈や考え違い(今回の場合はリスクと時間の関係)、いいかげんなカン、不毛なディスカッションを排除できます。
投資にカンや経験は必要ですが、理論や技術の背景も重要だということです
そうすることで、検証と再現は可能になるのです。
そう、投資はサイエンスでもあるのです。
また機会があれば、いろいろな解析やシミュレーションに関して、別の観点からも述べてゆく事にします。
では。
奥村尚