奥村式資産運用術

先週のイベントを経て、円はどこまで行くのか?

From:奥村尚
東京のオフィスより、、、

こんにちは。

相場は、いろいろなイベントがあった先週を乗りきって今に至りました。

もう、出る材料は出つくして、こんどはあたらしい手掛かりがない、という状況になってしまいました。

FOMCの利上げ決定を受けて、米債券市場では長期債を売り、ドルを買う動きが目立ちましたが、確かに瞬間的にはドル高(円安)になったものの、むしろ逆の動き(円高)となりました。

ここ何日かの為替市場は、G20を終え、そのG20でも明確な姿勢が出なかったため、余計にその傾向が出ています。

むしろドルに対しては円安のピークは終わったものとして、円高を懸念するゆえに株式も上値が重いように見えます。

今回の円高理由は、事後的にはいくつでもあげられますが、米利上げ回数が今年は(当初市場が懸念した)4回ではなく3回になるものと見込まれたため米金利の先高感が薄れたこと、そもそも今回の利上げは事前に市場が95%織り込んでいた(つまり、既に市場はドル買いを終えていた)ため、むしろ安心して反対のポジション(ドル売り)にシフトしたこと、が理由となるでしょう。

しかし、むしろ本来の水準へ向けた自然の流れ、ともいえるのです。

それを説明します。

日米の通貨レートは、長期的には日米で同じものを買う時に同じ値段で買えるレートに落ちつきます。

購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity)といいます。

これは理論的な一致点であり、実勢レートが購買力平価と完全に一致することはありませんが、PPPと大きくかい離する状態が長期に続くことはありません。

PPPの計算は、1973年を基準とする為替に、2国間の特定の指数を用いて計算します。

どこが発表するどの指標統計を使うかで多少異なりますし、PPPもいくつか種類があります。

(消費者が購入する物価(消費者物価)を基準とするか、国内企業間の取引価格からみる物価(企業物価)を基準とするか、日本が輸出する価格FOB価格(輸出物価)でみるかで、3種類あります。)

総務省統計局が公表する消費者物価指数、
日銀の企業物価指数などを使えば誰でも

試算できますが、その詳細はさておき、
ズバリ95円と考えてよいでしょう。

え、そんなに円高なの?

そうです。
95円は、円ドルレートの適正水準なのです。

ただし、この水準は、あくまでも統計から導いた理論値であり、
実勢レートは、ずっとかい離しているのが通常です。

かい離が解消されるのには時間がかかります。

3-5年です。

なぜそんなに時間がかかるのかは、
いろいろな説がありますが、
それは気にするときりがないのでやめておきます。

いずれにしても、
今のドル円(112.81円,3月21日)は、
PPPが示唆する本来水準95円からみると、

18.7%も円安であり、今後、長い時間をかけて、
95円に向かう過程である、といえなくはないのです。

その過程で、株は安くなるか高くなるか、
とは全く別の問題ですし、あくまでの
長期のトレンドということは強調しておきましょう。

では、次回をお楽しみに

奥村尚